お知らせ

拡大表示の方法: キーボードの「Ctrl」キーを押しながら「+」キーを押します。
縮小表示の方法: キーボードの「Ctrl」キーを押しながら「-」キーを押します。

2017年11月25日土曜日

11/9都教委定例会の根津公子さんの傍聴記

11月9日(木)に行われた都教委の、根津さんの傍聴報告です。
<教員に過労死ラインの長時間労働>



都教委の議題:内容
公開議題は
①「児童・生徒の学力向上を図るための調査」(都学力テスト)の結果について 
②「東京グローバル人材育成計画’20(Tokyo Global STAGE’20)」(素案)について ③都公立学校教員勤務実態調査の集計について(速報値)
④「学校における働き方改革推進プラン(仮称)」中間まとめについて 
⑤来年度教育庁所管事業予算見積について。


まずは、②「東京グローバル人材育成計画’20(Tokyo Global STAGE’20)」(素案)について
都の長期計画(都民ファーストで作る「新しい東京」~2020年に向けた実行プラン)、「東京都英語教育戦略会議報告書」(2016.9.8)をベースにグローバル人材育成に向けた学校教育の在り方を示すという。これまで取り組んだこと(オリンピック・パラリンピック教育の「Welcome to Tokyo」の開発や英語村「TOKYO GLOBAL GATEWAY」)、今後2020年度までに取り組む施策と事業内容について本日素案を公表。この後パブリックコメントを実施し、2月上旬に「パブリックコメントの結果及び計画策定について」を出すとのこと。

⑤来年度教育庁所管事業予算見積とともに、エリート育成ばかりに金を注ぐ都の姿勢が明確だ。公教育は全ての子どもの学びを保障すべきであって、エリート育成を目的としてはならないのに、だ。「計画’20」は3つの柱の1つに「豊かな国際感覚の醸成」を挙げる。ならば都教委は、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文送付を断った小池都知事の国際感覚をまずは問題にすべきではないのか。
次に、③都公立学校教員勤務実態調査の集計について(速報値 調査期間は6月19日から7月16日のうちの連続する7日間)

 ④「学校における働き方改革推進プラン(仮称)」中間まとめについて。
中学校教員の68,2%が過労死ライン(週60時間)を超えるとの結果。小学校37,4%、高校31,9%、特別支援学校43,5%と並ぶ。また、副校長では小学校84,6%、中学校78,6%、高校58,3%、特別支援学校86,7%が過労死ラインを超える。
 この結果を踏まえて都教委が出した「学校における働き方改革推進プラン(仮称)」は、「当面の目標」が「週あたりの総在校時間が60時間を超える教員をゼロにする」そのための「取り組み」が「平日は、1日あたりの在校時間を11時間以内とすること」「土曜日、日曜日については、どちらか一方は必ず休養できるようにすること」。
また、「取り組みの方向性」として次を挙げる。
ア.働き方の見直しに向けた意識改革(勤務時間を意識した働き方をするように等)
イ.教員業務の見直し(給食費等の徴収・管理を事務職員が行う、教員が在宅でも仕事ができるようにする等)
ウ.教員を支える人員体制の確保(スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置促進、学校支援ボランティアによる支援)
エ.部活動の負担軽減(「部活動指導員」の配置、地域人材の活用)
オ.ライフワークバランスの実現に向けた環境整備(病児保育や家事代行付きのベビーシッター利用の支援等)


<根津コメント>
★「学校における働き方改革推進プラン(仮称)」には、教員の長時間労働の一番の原因が都教委・文科省にあることの認識がまったくない。一言の反省の弁もない。教員の意識改革ではなく、都教委の意識改革が必要だ。子どもたちのことを知る教職員がどのような教育をするかを職員会議で論議し決定して仕事をしてきた時代(2000年以前)には過労死ラインの長時間労働は多分ほとんどなかった。都教委(文科省)が職員会議を指示・伝達の場に変え、教育内容を指示・強制し、また書類の提出を強制したことで教員の仕事が凄まじく増えたのだ。年間35時間ものオリンピック・パラリンピック教育、土曜授業の強制や押し付け「研修」、各種の調査報告、業績評価のための自己申告書、授業プラン等々の作成・提出を課すなどである。

★解決策は、教育行政が介入を止め、各学校に職員会議の決定権、教育課程編成権を戻すこと。そして、少人数学級や複数担任制にすること。この2点を実行することだしかし、都教委の「プラン」にはそういった解決策は一つもない。スクールカウンセラーを配置するというのならば、フルタイムのカウンセラーを雇用すべきなのだ。週1日の「勤務」では子どもとの信頼関係を築く時間がなく、子どもたちはスクールカウンセラーに相談しない。カウンセラーに仕事を振り向けても、かえって教員の仕事量を増やすだけ。そうした現実を私も在職中に見てもきた。昨年11月10日の定例会において都教委はいじめ問題への取り組み報告の中で、「教員とスクールカウンセラーが連携して対応した事例のうち、効果が見られた事例の割合が、どういうわけか過去2年間よりも減少した。」と不可解と言わんばかりの報告をしたが、こうした事実から学ぶことなく、今回も破綻した策を挙げる。学校支援ボランティア等にしても、同じことが言えるのではないだろうか。

★イ の「在宅で仕事ができるようにする」(仕事の持ち帰り)については、10年前までは多くの教員がそうしてきたが、「個人情報の漏洩」を理由に都教委が禁止したこと。オの「ベビーシッター利用の支援」に至っては、「我が子の病気ぐらいで休暇を取るな」との声が聞こえてきそう。過労死されるのは迷惑だからかたちを繕う、としか思えない「プラン」。一緒に傍聴していた友人は、「まさにマッチポンプだ!」と怒った。「都教委が次々に打ち出す教育施策が、教員の過労死ラインの働き方に拍車をかけていると気づけ!」と都教委に言いたい。