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2015年2月16日月曜日

2/9 再雇用拒否撤回第二次訴訟 東京地裁で結審

◆再雇用拒否撤回第二次訴訟が、2月9日、東京地裁で結審しました。その報告が近藤徹さんから寄せられていますのでアップします。

③報告集会(意見陳述原告より)

卒入学式での「君が代」斉唱時に起立しなかったことを唯一の理由として、2007年~09年の退職後の継続雇用(再雇用、非常勤教員など)の合格取り消されたり、採用を拒否された都立高校元教員25名が原告となり東京地裁に提訴して5年5ヶ月の歳月が経ちました。残念なことにこの間原告2名が亡くなりました(現在原告は22名)。

最終弁論が行われた東京地裁の大法廷(定員98名)には、多くの傍聴者がつめかけ、ほぼ満席となりました。終了後の報告集会の会場も椅子が足りなくなるほどの盛況でした。私も原告ですが、皆さんの暖かい傍聴支援に心から御礼申し上げます。

判決期日は、5月25日(月)13時30分、地裁103号法廷(大法廷 定員98名)に指定されました。私たちは、勝訴を確信しつつ、判決日を迎えたいと思います。そして、高裁・最高裁を展望して憲法と教育を守るため最後まで闘い抜きます。引き続き絶大なるご支援を!

◆原告2名、弁護士4名の渾身の意見陳述が法定内を圧倒!

傍聴者が原告・弁護士の意見陳述に静かに耳を傾ける中、意見陳述の迫力が法廷を圧倒しました。

原告の意見陳述は、都教委の採用拒否の理不尽さを告発し、東京の学校に生徒に寄り添う教育を取り戻そうという熱情にあふれたもので、感動を呼びました。Wさん、Nさんの意見陳述は、この問題の本質と原告の気持ち、教育に対する情熱を分かりやすく述べていますが、長くなりますのでWさんの意見陳述の全文を紹介します。

●原告Wさんの意見陳述(全文)

1、起立出来なかった理由
  原告のWと申します。体育の教員として37年間、授業はもちろん学級担任、教務主任、学年主任そして部活動指導と精一杯頑張ってきました。2007年3月、都立S高校を定年退職し、再雇用を希望しましたが、その3年前の卒業式で「君が代」斉唱時に起立しなかったことで、不採用となりました。
  私は国旗としての「日の丸」、国歌としての「君が代」を一概に否定するものではありません。しかし、「日の丸」に正対して起立し、「君が代」を斉唱する事を義務付け、従わない者は処分までして強制する都教委の姿勢に、私は同調することが出来ず、起立することが出来ませんでした。また、都教委が全ての都立学校に職員を派遣して、卒業式を監視するに至っては、まるで戦時中の学校に戻ったような感じすらしました。
  問題は、教職員に対する強制だけではありません。生徒の自主的活動にも影響が出ています。私が担任だった学年の卒業式においては、生徒たちがスライド上映を企画し、3カ月かけて完成させた力作も、上映するときに「日の丸」がスクリーンに隠れると言うだけの理由で、都教委の許可がおりませんでした。これが10.23通達後の卒業式です。誰のための卒業式なのでしょうか。

2、不採用が許されないこと
  私は、2004年3月の卒業式において、「君が代」斉唱時に座ったままでいたため、戒告処分を受けました。その後再発防止研修も受けました。再発防止研修のとき講師の方が「『君が代』斉唱時に起立しない行為を3回繰り返すと懲戒免職になる可能性がある」と言いました。起立しなかっただけで懲戒免職になるとは、信じられない発言でしたが、それを聴いて大変不安な気持ちになりました。懲戒免職になれば30年以上勤めた実績がゼロになり、退職金も出ません。それでは退職後の生活は成り立ちませんので、立つしかありませんでした。そして、再発防止研修後は退職までの3年間、周年行事を含め、7度の職務命令にすべて従い、起立しました。
  しかしながら、再雇用は不採用でした。再発防止研修を受けた事実や、再発防止研修後、7度の職務命令にすべて従った実績は考慮されなかったのです。この事から、「君が代」斉唱時に起立しなかったことが一度でもあると、その後、職務命令に全て従って起立しても、不採用になることが明らかになりました。
  業績評価や校長の推薦書も、無視されています。私は業績評価も推薦書の評価も共に総合Aの評価を受けています。校長は再雇用職員として十分勤まる人材として、私を推薦してくれました。しかし、それらも考慮されることはありませんでした。
  また、同じ戒告処分でありながら、「君が代」斉唱時の不起立以外の理由で戒告処分を受けた者との間に、公平性を欠いています。他の理由による戒告処分者は、ほぼ全員が採用されているのに対し、「君が代」を理由とする戒告処分者は、全員不採用になっています。「君が代」斉唱時に座っていたことは、戒告処分を受けた上に、さらに再雇用までも不採用にされなければならないほどの行為なのでしょうか。
  再雇用や非常勤の採否については、業績評価、推薦書、面接、などなどを総合的に判断して決めるのが、本来の姿であると思います。都教委はこれらの審査要件を全て無視して、立たなかったという一点のみで、不採用を決めました。この事は採用手続きにおける適正さ・公正さを著しく欠いており、許されることではないと思います。

3、不採用による損害
  私は再雇用される事を期待していました。時間的ゆとりのある再雇用職員の利点や、長い教員生活の経験を生かし、教材研究のほか教育相談や進路相談などにも取り組む気持ちでいました。
  しかし、不採用となり、その希望は叶えられませんでした。その空虚感による精神的苦痛は非常に大きなものでした。
  また経済的にも大きな損害を受けています。再雇用されて5年間勤務すると、1,000万円以上の収入が得られたはずでした。たった一度「君が代」斉唱時に、立たなかっただけでそれが全て失われました。卒業式の進行に何ら影響を与えることもなく、静かに座っていただけの行為が、1,000万円という代償に見合うものなのでしょうか。
  再雇用や非常勤の制度は、年金受給開始年齢が65歳まで引き上げられることを受けて、年金受給までの間の生活を守るための制度です。都教委はこの制度の目的や必要性を無視し、公正とは思えない理由によって、私たちを不採用としました。都教委の姿勢は、再雇用や非常勤制度の主旨に反するものであると共に、時代の要請にも逆行していると思います。
私たち原告は、採用されなかったことにより、多大な精神的苦痛や経済的損害を受けています。都教委の再雇用、非常勤の選考方法は著しく公正さを欠いており、私たちは全く納得出来ません。裁判所におかれましては、これらの事実を深く検証し公正なる判断を下して頂けるものと期待しております。宜しくお願い致します。

●原告Nさんの意見陳述(見出しと一部引用のみ)

被告都教委は職務命令違反が重大な非違行為であり、この1点で私達の採用を拒否したと主張しています。私は、「教育」というのは多様な立場や価値観が寛容されなければならないこと、そして被告の主張が誤りであることを,教育者としての経験から述べさせていただきます。

1 教員と校長・都教委の「教育」についての考え方の違い(Y君事件を通じて)
(1)Y君事件について
(2)校長の対応と職員会議での決定

2 「教育」についての考え方の違いと私の不起立
(1)職員会議の持つ重要な役割
(2)職員会議の決定を無視した校長の職務命令と私の不起立

3 職務命令体制は真の「教育」ではない(この部分は全文を引用)
「10.23通達」以降、都教委は、校長に対する業績評価や人事異動の権限を存分に使って、校長を都教委の意向に従わせています。また、職員会議における挙手禁止の通達が出された結果、職員会議はその役割を形骸化させられ、校長の権限と職務命令のみが優先されてきています。このように都教委は、現場の教員を自らの意に沿わせるよう職務命令体制を作り上げてきたのです。そして、通達→職務命令→懲戒処分→採用拒否という一連の仕組みが出来上がった結果、現場の教員は萎縮し、教育に対する情熱を失い、教員間の協働もなくなり、教育現場では何も言えない状態になっています。
2011年~12年にかけて出された卒入学式の懲戒処分事件に対する一連の最高裁判決では、卒入学式での職務命令は憲法に反しないという判断がなされました。しかし、一連の最高裁判決は、事実上、卒入学式の時だけでなく、日常的に出される職務命令体制をも追認することになりました。
その結果、今日の東京の教育現場では、職務命令体制の行き過ぎにより、管理職によるパワハラが横行する等、深刻な状態になっています。また、一人ひとりの児童生徒と向き合い寄り添うような「教育」は否定され、受験での合格数や学力調査の点数のみが重視されてきています。生徒に寄り添う教育を行なおうとしても、「一連の仕組み」によって定年後に再雇用されないという「脅し」を前にし、教員間の協働もなければ、到底そのような教育を実施してゆくことはできません。都立学校の現場は、真の「教育」とかけ離れてしまっています。

4 おわりに
「教育」というのは多様な立場や価値観が寛容されなければなりません。その「教育」を実現するのは、職員会議を中心とした教員集団でした。
どうか本件訴訟では、職務命令体制を安易に追認することなく、現場の教員に力を与える判決が出されますように、心より願うものです。

●弁護士4名の意見陳述(タイトルのみ紹介)
・H弁護士 一連の仕組みと憲法19条・憲法14条
・I弁護士 教師の教育の自由の侵害について
・TH弁護士 裁量権の逸脱・濫用について
・TS弁護士 国際人権法違反について

⑩弁護団から-6

⑬出席者から-1

◆以下の裁判の傍聴をお願いします。

★東京「君が代」裁判第四次訴訟第4回口頭弁論
(東京地裁民事11部。2010~13年処分取消請求、原告14名)
 2月20日(金)
  15時30分 傍聴希望者集合(抽選未定 裁判所前で案内あり) 
  16時 開廷 東京地裁527号(定員42名) 
  報告集会:ハロー貸会議室虎ノ門3F(案内あり)

★東京「再雇用拒否」第三次訴訟第6回口頭弁論
(東京地裁民事19部。原告3名。2011年再雇用拒否の損害賠償請求。)
 3月5日(木)
  11時 傍聴希望者集合(抽選なし・先着順) 
  11時30分 開廷  
  東京地裁527号(定員42名)