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2013年9月12日木曜日

9/6 東京「君が代」裁判(第二次訴訟)最高裁判決 “都教委の職務命令・懲戒処分は「合憲」”の不当判決

■9月6日(金)午後2時、最高裁判所第2小法廷で、東京「君が代」裁判(第二次訴訟)の上告審の判決があった。最高裁南門前には、12時過ぎから原告や支援者が集まり、傍聴希望者は110名に達し、傍聴券の倍率は2倍半を越えた。(青木茂雄)

◆裁判について
★第2小法廷の裁判官は、鬼丸かおる、千葉勝美、小貫芳信の3名。判決主文は、「本件上告を棄却する。上告費用は上告人らの負担とする。」が全文であって、裁判長が読み上げるのに要した時間はわずか10秒足らず。別途に渡された書面による判決文には、鬼丸かおる裁判官の「補足意見」が1件付け加えられたのみであった。

★東京「君が代」裁判(第2次訴訟)は、2005年と2006年の被処分者が提起したもので、原告数は62名に達し、処分取り消しの裁判としては一次訴訟の162名に次ぐ大規模な裁判である。2011年7月の東京地裁判決では原告側全面敗訴であったが、12年の「1.16判決」後の2012年10月の高裁判決では、職務命令の違憲・違法及び戒告処分の取り消しは認められなかったが、減給21件・停職1件、合計22件・21名については取り消しが決定された。1.16最高裁判決の“職務命令と懲戒処分は合憲・合法だが、「機械的な」加重処分は裁量権の逸脱である”という判旨をそのまま承けた「一部勝訴」の判決であった。
 高裁判決後、原告団はただちに上告と上告受理申立を行った(「憲法違反」の請求は上告申立、「法律違反」等の請求は上告受理申立、都教委も反対の立場から上告受理申立を行った)。上告と同時に、最高裁への要請署名活動を始め、短い期間であったが、10,530筆の個人署名と197筆の団体署名を集め、提出した。
★判決に先立って「上告受理申立」についてはすでに7月12日に原告側・都教委側双方について「不受理」の決定があり、かつ弁論が開かれなかったところから、新たな憲法判断をしないと見られ、1.減給・停職処分の取り消しの確定、2.②憲法判断については従来のとおり、が予想されていた。
 結果はほぼ予測の通りであり、“都教委の職務命令・懲戒処分は「合憲・合法」”の不当判決であるが、一部についてだけは原告の訴えを認めるという、一部勝訴の形をとった。 
⑧同じく説明2

★判決後、近くの貸会議室で報告集会があり、約100名が参加した。弁護団からは主として鬼丸「補足意見」どう評価するかについての発言と解説があった。弁護団の最後に澤藤事務局長が「残念だがここでは終わらない。これからも運動を続けて行く。我々は憲法を守る闘いの最前線にいる」と結んだ。
 最後に原告から何名かが立ち、口々に「ここで闘いを止めるわけにはいかない」と訴
えた。
                ◇     ◇     ◇ 
▼判決文は「主文」に続いて、判決の「理由」を示した。
1.憲法19条違反について
「「原審」の適法に確定した事実関係の下において、本件職務命令が憲法19条に違反
するものではないことは、当裁判所最高裁大法廷判決(これまでの判例、略)の趣旨に
徴して明らかである。所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ
る。論旨は採用することができない。」
2.その余の上告理由について
「論旨は、違憲をいうが、その実質は事実誤認若しくは単なる法令違反をいうもの又は
その前提を欠くものであって、民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれに
も該当しない。」 
  

                       ◇     ◇     ◇
★毎回決まり切ったこの種の文章には、いくつかのキーワードがある。まず、「所論」とは、裁判における争点であり、下級審の判決で争点として整理したものをさすと考えられる。「論旨」は、上告人の行った上告理由をさす。「論旨は採用することができない」つまり上告を棄却するということである。
★次は、「事実関係」である。これは、「「原審」の適法に確定した事実関係」のことであり、最高裁は原則として事実審理を行わないから、原審つまり高裁判決の判定した「事実関係」以外に「事実」は存在しないことになる。ここに、最高裁判決のからくりがある。つまり、「論旨は、違憲をいうが、その実質は事実誤認若しくは単なる法令違反をいうもの」というくだりの持つ意味である。
★二次訴訟の上告理由における憲法判断の請求は、19条(思想・良心の自由)のほかに1条(国民主権)、13条(個人の尊重)、20条(信教の自由)、23条(学問の自由)、26条(教育を受ける権利)も加えられていたがそれらはすべて「事実誤認若しくは単なる法令違反」として退けられてしまった。
 注意すべきなのは、「その余の上告理由」として棄却された憲法判断は単なる棄却ではなく、「事実誤認」として棄却されたことである。
  原審つまり高裁判決と連動した最高裁の「適法に確定した事実関係」のからくりを読み解き、究明していくことが今後の法廷での闘いには不可欠である。
 権力・都教委による“思想・良心の自由”“教育の自由”の侵害は「事実誤認」どころか、まぎれもない事実であ る。

⑯報告集会は平河町KDビル
                        ◇     ◇     ◇
▼鬼丸かおる裁判官の「補足意見」
 鬼丸判事の800字余りの「補足意見」は、今回の一連の最高裁判決の中では唯一のものである。従来の「補足意見」の継続のゼスチュアとも見られ、とくに新しいものではないが、いくつか注目点はある。
 まず、思想・良心の「間接的制約」の可能性に言及し、不利益処分にあたっては「真摯」さに対する「慎重な」配慮を求めた(裏読みすれば、「真摯」でなければ「慎重な」配慮は必要ない、とも読めるが)。
★求められる「慎重な衡量的な配慮」としては、「1.当該教諭の国旗国歌に関する思想についての従前からの表明の有無、2.不服従の態様、程度、3.不服従による式典や生徒への影響の内容、程度、4.当該職務命令の必要性と代替措置配慮の有無、5.不利益処分が当該教諭や生徒に与える影響度、6.当該職務命令や不利益処分がされるに至った経緯」をあげている。
  従来の補足意見が都教委・教員双方に自制を求めたものも散見される中、鬼丸補足意見はもっぱら都教委側に「これらの事情に配慮した謙抑的配慮」を求めている点が注目される。
 また、上記6点を逸すれば、機械的な累積加重処分ではなくても「裁量権の濫用となることもあり得る」としていることも注目されよう。