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2013年8月25日日曜日

『はだしのゲン』問題 高嶋伸欣さんからのメールです。

◆全国の教職員の皆さま     髙嶋伸欣です
 明日(8/26・月曜日)に出勤されたら、教育委員会から「はだしのゲン」が学校図
書館にあるかどうか、あるとしたら閲覧状況はどのようになっているかなどの調査が入っていないか、校長や図書室の担当者に確認してみて下さい。もし調査が入っていれば、次のような意味で、要警戒です。
 順に説明をします。

1.数日前、東京23区のある区(以下、A区)の公立中学校に教育委員会から、上記の調査の電話が入ったとの情報がありました。

2.目下のところでは、これがA区の教委独自のものか、都教委による全都規模のものかは不明です。

3.また、これは行政官庁として議会質問に備えた単純な情報収集にすぎないのかも、しれません。
4、しかし一方で、東京や神奈川の教委は情報収集や情報提供という名目で教科書採択に圧力をかけて一定の「成果」を挙げたばかりです。
 現場の校長たちがそれだけ教委に対して主体性を喪失している状況は深刻化しています。そのことを見越して、安倍政権の歴史歪曲政策に迎合気味の教委が、揺さぶりを掛けてきた可能性があります。

5.何しろ、下村博文・文部科学大臣が、松江市教育長による「はだしのゲン」の閲覧制限の考えは妥当だと公言して、広く報道されているのですから。
ちなみに、下村氏の選挙区は東京11区(板橋区)です(上記のA区ではないようです)。

6.また、安倍氏に継ぐ次の世代の教科書議連の主導権を目指して「手柄」争いをしている萩生田光一氏(党の教育再生実行本部・教科書検定在り方特別部会長=教科書法の制定を提言)は東京24区(八王子市)、彼のライバル義家弘介・文部科学政務官は神奈川16区(県央=相模原、厚木、伊勢原など)です。
 彼らと関係が深い都・県議や市・区議などが、議会でどのような質問をするか、あるいは水面下で教委にどのような働きかけをしているか、要チェックです。

7.単なる実態調査に見せかけたものが、悪用された前例があります。それは、文部省によるものです。「日の丸・君が代」の式典での実施状況把握でというものでした。
 調査結果によって、実施率0%の自治体が多数であると判明したとたんに、文部省が事実上の強制方針に転換したのです。1985年のことです。

8.これは、1985年2月に自民党本部が全国の自民党県連に対して、地元の教委に「日の丸・君が代」の式典での完全実施を求めるようにとの指示を出したのに合わせ、文部省が同年3月に実施状況の調査を全国に対して実施したものです。

9.その集計結果が、同年8月28日付の高石邦夫・初等中等教育局長名の通知(文初第162号)で全国に流されましたが、そこでは沖縄県や京都府など0%の自治体が多数あることが判明していました。

10.そして、同通知は調査結果の報告のはずであるのにそこには「入学式や卒業式において、国旗の掲揚や国歌の斉唱を行わない学校があるので、その適切な取り扱いについて徹底させること」という指示が巧妙に盛り込まれてました。強制に自信がなかった文部省が、結果報告を装いながら、自民党政権向けには、実施を指示していますという言い訳の文言を潜り込ませていたのだと、思います。

11.この通知以後、各地で「日の丸・君が代」の強制が強まり、実施率を高めることが教委や文部省の官僚の業績評価の一つともされていきます。

12.学習指導要領の表現も「斉唱させることが望ましい」から「斉唱するよう指導するものとする」(「指導しなければならない」という厳格な表現にしなかったのは、私立
 学校の自主性を尊重したため=西岡文部大臣)と変えられ、さらに実施率が高められていきました。

13.そのようにして上昇した実施率をさらに100%にするためのダメ押しとなったのが1999年の「国旗・国歌法」です。

14.今回の「はだしのゲン」についての調査も、上記の政治情勢下でどのように悪用されるか、分かりません。学校現場では、調査の有無やその意図などの把握だけでなく、同書を改めて読み合い、不当な干渉には迅速に対応できるように、話しあいや情報の共有化を進めていただければと思います。

15.  このような悪用化を食い止めるには、下村発言が不当で的はずれであることを明らかにするのが効果的と思われます。そのためにも、下村氏が支持した松江市の前教育長による指示・要請を同市の教育委員会が26日の会議で、明確に取り消し・撤回をするように求めましょう。

  以上、情報の紹介と髙嶋の私見です。転送・拡散は自由です。