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2013年7月2日火曜日

都教委の実教出版日本史教科書排除の「見解」と校長への通知に断固抗議する!

■既報の通り、6月27日の都教委の実教出版日本史教科書採択妨害の「見解」、各学校長への通知」について、同「見解」の根拠が、当原告団が一方の当事者である1・16最高裁判決(2012年)なので、見過ごすことはできません。下記の抗議声明を出しました。ご活用ください。(転載歓迎です。)

◆都教委による特定の教科書排除の見解に抗議する声明

 東京都教育委員会(以下、都教委)は6月27日、教育委員会定例会で「平成26年度使用都立高等学校(都立中等教育学校の後期課程及び都立特別支援学校の高等部を含む。)用教科書についての見解」(以下、「見解」)を「委員総意の下・・・確認」し、同日各都立学校長宛に「この議決に基づいて教科書を採択していきます」として、「このことを踏まえ、・・・適正に教科書を選定」するよう通知した(以下、「通知」)。更に、都教委は、「指摘した教科書を選定した場合は、最終的に都教委が不採択とすることもありうる」(「毎日新聞」2013年6月27日夕刊)といって、この教科書を選定しないよう強要している。

 「見解」は、実教出版の教科書『高校日本史A』『高校日本史B』の「国旗・国歌法」に関する「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」との記述が、「都教育委員会の考え方と異なるものである」とし、この2つの教科書は「都立高等学校等において使用することは適切ではない」と決めつけている。その根拠として、2012年1月16日の最高裁判決で「国歌斉唱時の起立斉唱を求めた校長の職務命令が合憲であることが認められたこと」をあげている。

 私たち東京「君が代」裁判原告団は、同最高裁判決の一審原告らが所属する一方の当事者であり、都教委の最高裁判決に関する主張と「見解」に基づく教科書採択への不当な介入を決して看過することができない。

 最高裁判決は、「本件職務命令が憲法19条(注 思想・良心の自由)に違反するとはいえない」としたものの、「国旗及び国歌に対する敬意の表明」であるので「思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面がある」としている。
 また、戒告処分を容認したものの、減給以上の処分については、「戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要」と判示し、「処分が重きに失し、社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者の裁量権の範囲を超え、違法」として減給1ヶ月の懲戒処分を取り消したのである(別件訴訟で停職1月の懲戒処分も取り消す)。
 それまでの都教委の1回目の不起立等で戒告、2、3回目減給、4回目以上停職、の一律・機械的な累積加重処分が断罪されたのである。
 宮川光治裁判官は、職務命令が違憲・違法で戒告を含む全ての処分が取り消されるべきとの反対意見を述べており、櫻井龍子裁判官は補足意見で、「不起立と懲戒処分の繰り返しが行われていく事態が教育現場の在り方として容認されるものでない・・・。教育の現場においてこのような紛争が繰り返される状態を一日も早く解消し、これまでにも増して自由で闊達な教育が実施されていくことが切に望まれるところであり、全ての関係者によってそのための具体的方策と努力が真摯かつ速やかに尽くされていく必要がある。」との補足意見を述べているのである。

 以上を見れば、都教委が最高裁判決の全体の趣旨をことさらねじ曲げ、自己に都合良い部分だけを取り出し、これを根拠に実教出版の教科書を「適切でない」としているのは明らかである。

 そもそも同教科書は、文部科学省の検定済みのものであり、都教委の「考え方と異なる」として排除することは、文科省の検定さえ否定する「二重検定」に他ならない。
 この「見解」と校長への「通知」は、都教委による学校現場への不法・不当な支配介入であり、絶対に許されるものではない。教科書の選定は、学校の教育課程編成権に属するものであり、「見解」と「通知」はこれに乱暴に介入するものである。旭川学力テスト事件最高裁大法廷判決(1976年5月21日)や現教育基本法第16条等に反する「教育不当な支配」そのものであり、現行の教科書採択制度にも反する不当な介入である。
 しかも、都教委定例会での「見解」の議決に際し、全く発言もせず賛成した教育委員の責任は、極めて重大である。
 また、教科書の採択にあたっては、直接教科書を用いて日々の教育活動をしている学校現場の意向を最大限尊重しなければならないのはいうまでもない。

 都教委の今回の行為は、単に教科書採択の問題にとどまらず、憲法が保障している、言論・出版の自由、学問の自由を否定する憲法違反の行為である。更に重大なことに、「考え方が異なる」として排除することは、多様な価値観を否定し、都教委が認める特定の考え方のみを生徒たちに注入しようという意図が明白であり、教育における民主主義的原則への挑戦である。

 加えて、実教出版の教科書の記述は「強制の動き」のある自治体を特定していないのに、これを理由に実教出版の日本史教科書を排除する「見解」は、都教委が「日の丸・君が代」の強制を行っていることを自ら認めたことになる。
 実際、入学式・卒業式等で「日の丸・君が代」の起立・斉唱等を強制する都教委の10・23通達(2003年)に従わないことで、これまで延べ450人もの東京都の公立学校の教職員が懲戒処分を受けている。これこそ「強制」そのものである。

 私たちは、都教委の教科書採択への不当な介入に抗議し、「見解」と校長への「通知」の撤回を求めると共に、広範な人々と手を携えて、「日の丸・君が代」強制を断じて許さず、不当処分撤回まで闘い抜くことを改めて表明する。

2013年7月1日
「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会・東京「君が代」裁判原告団
  共同代表 岩木 俊一  星野 直之