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2013年3月1日金曜日

2/28 「卒業式前日」のこと 大阪のIさんから

■大阪のIさんの勤務校も3月1日が卒業式。2月28日は卒業式に参加する3年生と、2年生の全員が参加しての卒業式の予行。

★そこで、添付の原稿にそって、人権教育推進委員会を代表して、生徒への話をしました。この内容は、3年の学年会、職員会議で、このような内容で話をすることを、口頭ででしたが確認をして、職員会議全体の了解を得て、予行の最後に話したものです。

★生徒への話が終わった途端、男子生徒が大きな声で質問しました。
「俺らの人権は保障されてるけど、先生らに人権はないということか?」
 事柄の一つの側面について、的を射た質問でした。

◆明日の卒業式を前に
                                                          2013年2月28日
                                                          3年人権教育推進委員

  私から、明日の卒業式について、少し話したいことがあります。
 今、卒業式の流れに沿って予行を行いましたが、実は明日の本番とは違うところがあります。明日は、校歌斉唱の前に、「国歌斉唱」の号令がかかり、「君が代」のメロディーが流れます。また、壇上には「日の丸」が三脚に立てて置かれます。本校教職員が、職員会議で議決した中には含まれていないものです。
 もし、みなさん一人一人が自分の意志として歌いたくないと思うなら、歌わなければならないという義務はありません。無理矢理立たせたり、歌わせたりすることは誰にもできないのです。あなたの心の中のことは、あなた自身が決めることで、卒業式は、みなさんのためにあります。何をして、何をしないか、最終的には自分自身で決めることができるのです。このような権利を「思想良心の自由」と言い、憲法に明記された重要な人権のひとつです。子どもの権利条約でも強調されています。

  スポーツの国際大会などでは、一生懸命、日本の選手を応援している人も多いと思います。日本選手が優勝して金メダルを取れば、「日の丸」が挙げられ、「君が代」が流されますね。国に「国歌」があり、「国旗」があるのは当たり前のように受けとめられています。
 「君が代」が国歌的扱いをされるようになったのは、明治時代です。天皇中心の国づくりの中に位置づけられ、国定教科書の中では、「君が代」は「君が代は(天皇陛下のお治めになる国は) 千代に八千代に(千年も万年も) 細石の巌となりて(小さな石が集まって大きな巌になって) 苔の生すまで(苔でおおわれるまで永久に)」、すなわち「天皇陛下のお治めになる世の中がずっと続きますように」という意味だとしていました。しかし、戦後は1999年の国旗国歌法制定時に、はじめて、「君が代」の歌詞についての政府見解が明らかにされました。日本国憲法の主権者は、天皇ではなく国民ですから、「天皇を国民統合の象徴とする我が国の繁栄と平和を願う歌」だというものです。

 とくに、何も疑問を感じない人の方が多いと思います。しかし、一方で、「日の丸・君が代は侵略戦争を進めた大日本帝国のシンボルであり、民主国家となった今日では、日本の国歌・国旗としてふさわしくない。」という考え方もあります。ただ、少なくとも、政府は「児童・生徒の内心にまで立ち入って強制するものではない」と国会で言明しています。「君が代」や「日の丸」の問題は、その歴史や現在のあり方から、個々人の思想や良心の問題に深く関わり、単純には「儀礼」や「ルール」の問題として受け入れることが出来ない人もいるからです。
 しかし、大阪府と大阪市では、昨年度、学校施設への「国旗の常時掲揚」と学校行事での「国歌斉唱」を義務づける条例を制定しました。これを根拠に、東京に続き大阪でも、教育委員会は、教職員に「国歌斉唱」時に起立を義務づける「職務命令」を出しました。この「命令」によって、教職員は「起立」することが強制されています。でもこれは、教職員には強制されていますが、生徒や保護者に「起立」を強制するものではありません。

 2006年末に改訂された教育基本法をめぐる国会審議でも、「国を愛する心」を育てるという問題等で激しく意見が対立しました。その審議の中でも、卒業式や入学式への「国旗・国歌」強制にかんする問題が取り上げられています。過去にとらわれず、「未来志向」で肯定的に考えればいいではないかという人もいます。しかし、「日の丸・君が代」のもつ歴史や現在の国家の在り方にかかわって、自らの思想信条にかかわる行為を強制されたくないという人もまたいます。そのどちらの考えも尊重されなければなりません。
  3年生のみなさんは、明日○○高校を巣立ちます。文字通り激動する社会の中に入っていきます。正解が見つからない問題も数多くあります。国旗・国歌の問題もその一つかもしれません。それらを自らの知識と判断力に従って自分なりの答えを見いだしてほしいと思います。一人の主権者として、自らの判断力に自信を持ち、勇気を持って生きていってほしいと思います。